テレビ番組のネット同時配信=リアルタイム配信による広告への影響予測

この記事は約5分で読めます。

テレビ番組をインターネットでも放映することを、同時配信、リアルタイム配信と呼びます。
国会でもなぜかさんざん議論されてきましたが、NHKは20年4月から「NHKプラス」で実施しており、民間での実施はいつになるのかと騒がれ続けてきました。
・・そのせいで集金に来る人々が図に乗っているのはまた別の話です。受信できる環境があるから払え、という論理なのであればもはや住民税と同じように引き落としてほしいです・・。

フジテレビの会見では1月開始、プラットフォームはTVer、と表現されましたが、各社概ねそのような形です。
テレビ東京が地方でも見られるのは楽しい・・!ポケモン、おはスタなど、小学生は大喜びしそうです。

今回は、リアルタイム配信に関する広告領域への影響を考察します。

リアルタイム配信内の広告について

通常TVCMであれば、原則2クール6か月を軸とする番組提供社(30秒以上の枠、ご覧のスポンサーがお送りしましたでロゴが表示される広告主)のタイム枠と、それとは無関係なスポット枠、さらに、そこからはみ出たSAS枠等でCMが流れます。

リアルタイム配信の場合、このタイムないしスポット出稿各社のTVCMが流れるのでしょうか?

スポットの場合

明確にNoです。
スポットの買い方はGRP単価がベースになっており、GRPはリアルタイム+タイムシフト(3地区の場合)の、ビデオリサーチ社が計測する指標に基づいています。
ビデオリサーチ社がTVデバイスのGRPしか測らない以上、たとえ視聴者がスマホで同時配信を見るようになったとしても、GRP自体が減少するので単価に対し不具合は起こりません。
ゆえに、現状のスポットの場合はリアルタイム配信により配信面に影響は及びません。

タイムの場合

厄介です。
タイムの買い方はGRPではなく番組単位です。これはつまり、どんなに視聴率が悪くても価格は変わらない(実質的なGRP単価には依存しない)、ことを意味します。
これは、そもそもタイム枠自体が、番組が持つポジティブイメージの借り受けや番組固定ファン層の理解醸成、タイムでしか買えないプレミアムな枠の確保や局との関係性維持強化とスポットとは異なるためです。

テレビ局のスタンスですが、

・現状タイム/番組提供社に対し、番組提供への対価を「放送料」として請求している。
・テレビ局は「放送料」を、「制作費」と「電波料」の費目に分けて計上している。
・リアルタイム配信は「放送」ではなく「配信」で、テレビ局も追加コストがかかる
タイム提供者が持っている、提供番組内においてCMを「放送」する権利は、リアルタイム配信にはあてはまらない

というもの、です。
ただしリアルタイム配信枠に関する優先的な案内はあるとのこと。案内されたとき、広告主はどう反応するんでしょうか、ごねる気がしますが・・。

広告掲載優先順位

タイム提供者への配慮から、4段階に分かれるそうです。

まずは地上波レギュラー提供社限定の、番組指定の予約型広告です。
タイム提供しているのに追加費用を支払わされるのか・・というのはありつつですが、この議論はキャッチアップ放映の際にも出てきたものですので、受け入れるしかない部分ではあります。

次いで、統合在庫の予約型広告、運用型広告と続きます。
予約型広告では、統合在庫は番組指定は不可、という話を聞いています。タイム的な使い方はできないようです。経済系の番組などでは需要ありそうですが・・仕方ないです。
運用型広告ではTVerそのものでもDV360経由でもなんでも、これまで通りのものです。リアルタイム配信限定の広告出稿はどうやらできない様子です。

また、1社提供番組の広告在庫は解放されない見込みとのこと。

リアルタイム配信による地上波在庫への影響

テレビコンテンツの奪い合いなのか

いつでもどこでもテレビコンテンツが見られる環境により、生活者の利便性は向上する見込みです。これは、テレビとの接点が薄れている特に若年層や、テレビが見られない場所にいるタイミングのテレビコンテンツ視聴の機会を増やすことで実現します。

上記により実現すると思われることは、新規視聴者の獲得/離脱者の減少です。
新規視聴者が増える/番組継続視聴の離脱者が減ると、テレビコンテンツ自体の価値となるためテレビ局が収益化しやすくなります。
例えば、お風呂場でリアルタイムに野球やさんま御殿がみられるのはちょっと楽しいかもです。

また、キャッチアップ放送により確認できている、地上波視聴への回帰も期待されています。
・・が、今回はどちらもリアルタイムですので、前週ドラマをスマホでみていた人が今週テレビで見るかといわれると必ずしもそうではない気がします。

検証スケジュール

22年1月から同時配信が本格スタートしますが、22年いっぱいで効果検証を終えるスケジュール感のようです。

検証はTVerと地上波ですので、電通や博報堂の持つ、結線テレビと各種デバイスをつなげたログデータをもとに行われるのだと思います。この場合に重要となってくるのが、結線テレビと各種デバイスの統合方法です。
世帯レベルで紐づけるのか個人レベルで頑張るのか、ID取得方法はどうするのか、1回きりの番組と継続的な番組ではIDシンク率が異なるのではないか、そもそもリアルタイム配信はどれだけみられるのか(出現するのか)など、クリアにすべき要素は多数あります。

おそらく結論は決まっていて、
・リアルタイム配信により新たな視聴者を獲得できた
・リアルタイム配信から地上波への移行がみられ、地上波広告にもポジティブな影響があった
・地上波で離脱した層の一部をリアルタイム配信で拾えており、キャッチアップと合わせ、再び地上波へ回帰させる効果もあった
・地上波の視聴率減少は限定的かつ予測可能なもので、スポットへの影響はほとんどないと考えられる

みたいな形になるのかなと。