博報堂AaaSは後だしジャンケン?電通のAX/BX/CX/DXとは

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取締役副社長 執行役員:榑谷典洋さんのインタビュー記事を要約し、AaaSとAXを比較しました。

電通の目指すところ

コンサル会社との比較観点から

電通の実際の業容はマーケティング全体に対するサービス提供。
ここで言うマーケティングとは、マーケットを創造して拡大すること、つまり売上を上げること。

一方、コンサルティング会社は業務の効率化やシステム化を得意としている。
売上を上げるテーマは主としたサービス領域ではないと思われる。

それに対し、電通が提供しているコンサルティングは、ダイレクトにクライアントのグロース(売上)を後押しすることを主たる目的として展開している点が異なる。

広告は手段の一つに過ぎない

デジタル広告の全世界収益ランキング(Ad Age Agency Report 2020)では、軒並み上位をコンサルティング会社が占めています。電通は9位の順位にある。

とはいえ、電通としてはこの順位に特に価値は見出していない。

なぜならば、電通は

AX:広告宣伝の変革

CX:カスタマーエクスペリエンスの変革

DX:digitalの変革

BX:ビジネスの変革

のA~DX4領域を包括的に提供することを目指しているため、AXの中の一部について見ているわけではないため。

より詳細には、電通がベースとしているのは、パーパスを再定義するなどのビジネストランスフォーメーション(以下、BX)で、それを達成するために、カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)という概念が重要になってきているものの、今の時代においてCXを提供するには、データとテクノロジーの基盤が不可欠なので、ベースからBX、DX、CX、そして広告宣伝の変革であるAXという順で考えており、統合的にカバーすることで価値が生まれる、という意味。

別の言い方をすると、電通はクライアントのグロース拡大を目的にしているが、広告だけでクライアントのマーケティングROIを改善することは不可能だととらえている、ということ。

AX領域の進化について

広告効果の可視化の流れ

ノバセルなどが広告効果を可視化する試みを行っているが、これまでも電通は結果を問われていたわけなので、特段、ノバセルなどの動きを新しいとは思っていない。
あえて言うのであれば、広告宣伝、つまりコミュニケーションの効率だけのROIでは、もはやクライアントは満足されないのではないかと思っている。

アクチュアル等は一つの管理手法でしかなく、重要なのはROIが上がっているかどうか。
なので、電通は結果に対する説明責任が問われてきたし、説明責任を果たしてきた。
これからは、結果が問われてくる。

メディアバイイングの自動化

従来は、ある一つのオンエアの枠がどのような性別・年齢の人に、どれくらい見られているか、ということが重要だったが、今求められているのは、よりリッチなデータ、例えば、どのようなマーケティング的属性を持った方が見ているのか、あるいは見る可能性があるのかなど。

これが判断できなければ、その枠が最も効果を発揮するブランドやサービスは分からないため、それを見つけることが、最も価値あるメディアプランニングを実現するということであり、そのベースになるのが、マーケティング的により深掘りをしたデータである。
単にメディアプランニングのみについて言うのであれば、これらのデータに基づいた、AIによる省力化・自動化という余地は増えていく。

とはいえこれは電通がすでに取り組んでいることでもあり、かつ、より大きな意味でのメディアプランニングや顧客体験の再定義をすることによって、これまでとは次元の違う効果・効率を達成することができる。
省力化・自動化の動きに対して、電通としても積極的に捉えているが、これだけが殊更大きなニュースだとは思っていない。

自動化すべきなのかどうか

Cookieレス時代においては、クライアントが持っているファーストパーティデータとオーディエンス系のデータとがどう連携できるのか、が重要。
その意味で、今行われているCookieをベースにしたプログラマティック広告の自動化は、姿を大きく変えないと意味をなさないのではないかと思っている。

つまり、大きく姿を変えられない・Google、Facebook、Amazonの世界がつながらない現状においては、メディアバイイングは自動化一本に集約されていくことはないし、メディアプランニングの価値が変わると考えている。

Cookieが使えなくなることによって、デジタル広告の中でさえも自動化がいったん難しくなります。これに対応する動きもあり研究も進めているが、広告以外の範囲まで含めてグロースを支援することを目的にし、投資効率を図ろうとすれば、全てを自動化するという考えにはならないのではないかと。

BX領域の進化について

トヨタ・コニック・プロ株式会社

トヨタ自動車(傘下のデルフィス)と電通の出資により新会社を設立しました。

カスタマージャーニー、顧客体験の全てをより良くしていくという課題に対し、共同でソリューションを作り上げていくことを目的とした会社で、クライアントとの新しい仕事の形です。
発注者、受注者の関係ではなく、電通がより結果に責任を有する形態です。

より具体的には、従来の発注、受注の関係性である、テレビ広告を作っていくら、デジタル広告に出稿するのでいくら、というものから、上がった成果をその貢献度に応じてシェアすることが可能な座組みとした。

フレネミー時代

クライアントファーストで、誰がライバルで誰が仲間なのかということを白黒色分けしすぎると、仕事ができないのではないかと思っている。

クライアントの課題を解決する時にコンサルティング会社、あるいはSIerの皆さんと一緒にやった方がよければそうするという、それだけのことで、大事なことはクライアントにとって良い形で仕事をすること。サービスの提供側の論理で「グループ外の人たちとは仕事をしません」とするつもりはない。

クリエイティビティとサイエンスを高度に融合させるためにコンサルティングファームがクリエイティブブティックを買うことがあるように、電通ではそれが自社の中でもできている。
とはいえ、別領域の、例えばコンサルティング会社のような、外部プロフェッショナルと組むこともある。

外部のプロフェッショナルを雇うことのメリットは「いつでも変えられる」ところで、その意味で、高級人材紹介業としての電通の在り方は、装置産業ではなく人がサービスを提供しているので、今までも、これからも変わらない。

(考察)AXとAaaS

以降はインタビュー記事ではなく

AaaSとは

こちらの記事で詳細をまとめていますが、一言で、

「システム」を基盤とした統合メディア運用「サービス」の提供すること

だそうです。

AXとAaaS

電通の提唱するAXですが、これは”CX、DX、BXを達成するための手段(といいますか必須要件)としてのデータとテクノロジーの基盤”、として定義されています。

一方、博報堂のAaaSはXaaS文脈で、価値の比重をサービスに移す、その手段はシステム基盤であると定義されています。

・・似た概念でして、お互いの用語を借りて説明します。
博報堂が提唱するAaaSを、電通が提唱するAX/BX/CX/DXの概念で説明すると、

AaaS = AX(広告宣伝の変革)により得意先の事業成長を導くこと

とも言えます。

両者とも、クライアントの事業成長を成し遂げようとする、その志は同じですが、手段が異なります。

  • 電通
    • BX~AXの全体の統合的なカバー
    • 1つに絞るとすれば、BX(ビジネストランスフォーメーション)による。
    • BX実現のため、DX、CX、AXが存在するともいえる。
    • 言い換えれば、広告だけでクライアントの事業成長を達成しようとは考えていない。
  • 博報堂
    • AaaSによる
    • 広告領域のサービス化によりクライアントの事業成長を達成しようとしている

代理店というビジネスパートナーとして大枠から取り組む電通と、広告代理店として広告に特化した博報堂という構図です。

電通のAX、そしてBX/CX/DXがより具体的なものとして、あるいは体系的なサービスとしてローンチされたとき、博報堂はそのスコープの狭さというビハインドをどう捉え、どのように戦っていくのか。

注目していきます。